5.続・親子マスタ

製薬会社は外部の調査会社からデータを購入したり、自社MRの情報に基づき、薬局に対して処方元施設を把握していることは、先に書きました。

その際、例えば、『処方箋応需率70%以上の施設を親施設とする。』といったような基準を設けています。この親子の設定基準は製薬会社によってそれなりに異なっていると思いますが、大きくは違わないでしょう。

仮に、70%ということになると、30%は他の医療機関から受け入れている訳ですが、その薬局の実績は親施設のレイヤーで見る際には、100%が親として登録した医療機関に紐づけられます。

上の図の例では、C薬局は受け入れ処方箋の70%がA病院からのものなので、C薬局の親はA病院となりますが、D薬局は最も多く受け入れているのはA病院の処方箋ですが、全体の65%であるため、D薬局の親はA病院とはならず、D薬局の実績となります(親がいない扱い)。

少し乱暴な気もしますが、マスタに登録して運用する以上、これは仕方のないことです。MRにしてみれば、担当施設の処方箋が担当外の薬局に流れることもある一方、担当施設以外から出た処方箋が担当薬局に入ることもある訳です。


実際には、埼玉県川口市の患者が、東京都北区の病院で処方箋をもらって、自宅のある川口市の薬局で薬を買うということは普通にあり得るでしょう。川口市と北区の担当MRが異なるということも当然あり得ます。

そして、製薬会社によっては、この親子関係を品目や、領域ごとに管理しているケースもあるかも知れません。

というのも、比較的安価で納入軒数が多く、どこででも処方されている薬( 例えば防御系の胃薬とか抗生物質など )と、高価な薬とでは事情が変わってくるからです。
前者の場合は100%反映させることは不可能との考え方になりますが、後者の場合はそういうわけには行きません。

高価な薬の場合

高価な薬の場合は事情が異なります。

例えば、2019年の薬価改定で最も高い薬価は、バイオジェンの「スピンラザ」( 脊髄性筋萎縮症治療剤 )で、9,493,024円/瓶。途方もない金額ですが、恐らくこれは医師や看護師が投与するものだと思いますので、薬局で売られることはないでしょう。従って親子の問題は生じません。

薬局で売れそうなものとしては、例えば、ノボノルディスクファーマのレフィキシア( 血友病Bの治療薬 )。これは自己注射がありますから、薬局でも売られるのではないかと思います。静注用2000で845,605円/瓶。

こうなってくると、MRにとって担当医師の処方箋が担当外の薬局に受け入れられると、大きな問題となります。

希少疾患の場合、MRは一つ一つの症例を把握していると考えられますので、このような場合は、プライマリー領域を前提に設計された親子マスタに基づく一律の紐づけとは別の管理が行われているケースがあるでしょう。

希少疾患ではない場合も、『薬局で売れる薬価の高い薬』については、マスタの設定内容に対して、何かしらの補正を行っているケースもあるのではないかと思います。

『新製品が出るときは、薬価の高い薬かどうか、内服か注射薬か、注射薬だったとしたら、自己注射があるかどうかを確認しましょう』というのは、こういう理由のためです。

処方元を特定する究極の方法

処方元に確実に正確に紐づけるには、『処方箋を基に実消化実績を案分する』他ありません。現在卸から納入データを受領しているように、国保連合会支払基金から全てのレセプトデータを入手出来れば実現できるでしょうが、おそらく、現実的なことではないでしょう。

また、MRの活動対象は処方元に対してだけではありません。MRは薬局に対しても情報提供を行います。従って、すべての実消化実績を処方元に紐づけられれば、実消化面でのMRの評価が完成するという訳でもないと考えます。

( 2020.01.09 )

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