製薬会社コマーシャル部門の、実消化に関わる計画について解説します。

製薬会社のコマーシャル部門は、売上計画(
製品ごとの実消化の全社計画を、支店、営業
MR別計画を基に、MRは自分の計画を担当
これは、流通部門が立てる卸別・卸組織別の
計画を取り扱う上で、考慮しなければならな
この業務の呼び方は、製薬会社によって異な

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実消化に関する計画

製薬会社のコマーシャル部門は、売上計画( 製薬会社から卸への販売 )とは別に、実消化の計画を立てます。

計画は、製品毎に支店、営業所、MRといった営業組織に設定します。
MRは自己の計画を施設単位に割り振ります。

また、卸との間でも計画を立てます。これは流通部門が行います。
卸の営業部や支店、営業所などの単位で計画を設定し、その達成度合いで卸に支払うリベートが変わります。

主な計画として以下のようなものがあります。

  1. 組織・MR別計画
  2. 施設別計画
  3. 卸別・卸組織別計画
  4. 卸施設別月次積上げ

組織・MR計画(実消化)

製品ごとの実消化の全社計画を、支店、営業所、MRといった営業第一線組織体系に展開したものです。

営業部門が追いかける事業計画です。

計画作成に当たっては全社の実消化の計画を支店、営業所、MRに落としていきます。( これは製薬会社に限ったことではないでしょう。 )

しかし、必ずしも、MRの合計=営業所の合計=支店の合計=全社計になるとは限りません。

これはそれぞれの会社の文化になりますが、以下のようなケースがありえます。

  • MRに担当させると不公平を生じるような施設について、営業所直轄、支店直轄とし、実績も実消化の計画もMRには持たせない。
  • 下位の階層に展開するときは、バッファを積む。

その様な場合は、システム的にも、それぞれの階層が下位の集計ではなく、独立して管理されるケースがあります。

設定期間、単位

会社によって異なりますが、年に1回、もしくは半年毎・四半期毎に、月別の計画を設定します。同一の会社でも、品目によって期間が変わるケースもあります。

また、多数の品目を扱う会社の場合、計画は、すべての製品に対して設定する訳ではなく、主要製品に対して設定します。

設定の粒度は、品目、ブランドの単位が一般的ですが、特に注力している規格があればその規格だけの計画を設定することがあります。たとえばAという品目には、細粒とカプセルがあったが、ドライシロップが新たに発売されたため、A製品としての計画とは別に、A(ドライシロップ)のみの計画を設定するというようなケースです。

計画システムの担当者は苦労が多い

このように、実消化の計画は、複雑なことが多い上に、策定スケジュールが決まっていること、また、期替わりなどでのプロモーション変更時に、レポーティングシステムなどより早くリリースする必要があるなど納期が厳しいことが多いです。さらに、MRを始めとする社員のインセンティブに関るため、品質には気を遣う必要がありますし、トラブル時には厳しい状況になるため、担当者は苦労することが多いサブシステムです。

軒数計画

実消化計画は金額で立てられますが、付随的なものとして、納入軒数を設定する場合もあります。これは、プライマリー領域の製品に対して設定されます。

また、プライマリー領域の新製品が上市された場合も軒数計画をたてる場合があります。

( 2019.11.28作成、2020.08.18修正 )

施設計画

MR別計画を基に、MRは自分の計画を担当施設に分解します。

その際には、過去の自社品実消化実績や、競合他社品( 外部より購入 )実績のトレンドが参考になります。

製薬会社によっては、施設別に設定するところの他、DDDブリックなどの、外部から購入できるデータの粒度単位に設定するケースもあります

また、組織・MR計画が月別に数字を持つのに対して、施設計画は一般にはその時に立てる組織・MR計画の期間の計です。つまり、下期の計画を設定しているのであれば、MR計画は月別ですが、施設計画は下期計を持ちます。

施設計画は、組織・MR計画を立てる上での根拠であるとともに、組織・MR計画を期替わりの組織変更や人事異動、担当替えなどをへて翌期の組織・MRに引き継ぐためのものであり、月別に設定する必要が薄いということとともに、施設への納入は隔月の場合もありますし、期の計画策定の際にそこまでの精度が出せないということもあります。

ただし、取り扱い施設が極めて限定されるような疾患の治療薬については、もう少しシビアに施設計画を設定するということもあるかと思います。

( 2019.11.28 )

卸計画

これは、流通部門が立てる卸別・卸組織別の実消化の計画です。卸との共闘を行う製品が対象となりますので、例えば主に大学病院の院内で使用されるような薬は対象外で、多くの施設に納入されMRだけでは回り切れないタイプの薬が対象になります。

また、金額だけではなく、納入軒数の計画も設定されます。

この卸計画の達成状況に応じて、卸へのリベートが増減します。

さらに、製薬会社としては、採用していただいていない施設に採用して欲しいですし、採用先には増量して欲しい( 拠点育成 )ですから、納入軒数、新規納入軒数などの軒数の他に、納入している量に応じたランクが設定されてるケースもあります。例えば、「月間1000錠以上納入先軒数目標」と言ったようなものです。

多様な組織別計画設定

卸計画は卸の組織単位でも設定されます。たとえば、営業部で幾ら、その下の支店で幾らというように設定されます。どの組織階層で設定するかは、卸によって変わります。

そして、計画達成評価も複雑です。支店ごとに達成有無が評価されると同時に、営業部でも評価されます。営業部で計画達成していたとしても、その下の支店で全支店達成しているのと、未達成の支店があるのとでは、評価が変わってくる場合があります。

このあたりは複雑ですし、製薬会社によってずいぶん違うと思います。また、計画評価のサブシステムも含めて、システムの実装方法も製薬会社によってまちまちではないかと思います。いずれにしても、卸に支払う金額に影響しますから、品質には気を遣います。

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( 2019.11.29 )

MR計画と施設担当替え

計画を取り扱う上で、考慮しなければならないのが、施設の担当替えです。他にも、組織変更や施設の親子関係のアップデートなども関連があります。

計画をいつどのように立てるかというのは、製薬会社によって異なりますが、計画は期や年度ごとに立てますから、当然ながら、同じタイミングで行われる施設担当者変更や、組織の変更の影響を受けることになります。

期末に翌期計画を策定する場合を例に説明します。( 飽くまでもひとつの考え方の例です )

期末に営業所の来期計画が固まると、営業所長はその計画を現在のMRに割り振りします。それを受けたMRは、今期の自分の担当施設に計画を割り振ります。

この作業で来期の施設計画が固まります。その後、来期の施設担当が決まり、施設計画を来期の施設担当で集計して、来期のMR計画となります。

これは、組織変更なども同じ考えとなります。

たとえば、東京支店は、東東京営業所と西東京営業所の2つの営業所だったのが、東西両営業所から独立する形で、南東京営業所が誕生し、 3営業所体制になるという場合を例に考えます。

新年度の営業所計画を立てるには、一度なにかしらの細かい単位に分解して新組織に再構成しないといけません。たとえば、ひとつの市区町村は複数の営業所に属さないというルールがあれば、市区町村ごとの実績を基に、新年度の担当営業所にひも付けて、導き出すということになります。

さらに、病院診療所と薬局の親子関係をアップデートすることも考慮する必要がある場合があります。

処方元(施設集合)毎に計画を立てる場合、現在の親子関係に基づいて、実績のトレンドが示され、翌期の施設計画を設定したとして、傘下の調剤薬局の親施設が翌期から変更になるとすると、施設計画が不確かなものになってしまいます。

これを解決するには施設単体ごとに計画を設定する、或いは計画策定期間は親子関係を変更しないなどの考慮が必要となります。

実際の運用としては、どこまでシビアにやるかということになります。

仮に親子の問題をクリアしたとしても、例えば翌期に閉鎖が決まっている病院の計画をどうするのかなど、さらに問題は生じるので、どこかで人間力で調整をする必要が出てきます。

上記の様な手順を分解してシステム化して、スケジュールに組み込んで進めるところもあれば、ある程度人間が鉛筆をなめて、計画を作成するところもあります。

そのあたりは文化というか、考え方という事になります。

( 2019.11.29 )

卸施設積上げ

この業務の呼び方は、製薬会社によって異なりますが、「積上げ」という文字が入っていることが多いと思います。

これは、卸・施設(施設単体)・製品(包装単位)・年月がキーとなっているもので、卸の担当であるMSとの間でMRが詰める当月(月末の場合は翌月)の計画になります。施設計画がMR計画の直接的な根拠となるものであるのに対して、『卸施設積上げ』は期首に設定した当期計画に直接リンクするものではなく、当期現時点までの進捗も加味した上での、今月(月末の場合は来月)に目標としなければならない数字を達成するための詰めに使用するものといえます。

あくまでも、卸との共闘用のツールですので、対象品目は、卸との共闘品目に限定する事が多いと思います。また、販路についても全販路ではなく、開業医販路や薬局販路が対象になることが多いと思います。

ただ、この辺りは会社によって異なるのではないかと思いますが。

さらに、「今月、どこに幾ら納入する」というものなので、毎月、当月分を設定します。また、隔月納入の施設であれば、今月は納入月なのかどうかということも意識した精度になります。

MR計画や卸計画と大きく異なるのは、ブランド単位ではなく、「○○○の錠剤20mg 50錠入り」 という包装単位で設定するということと、金額ではなく、数量で設定するという点になります。( そうでない会社もあるとは思いますが )

「 △△クリニックに、『○○○の錠剤20mg 50錠入り』を2箱納入してください」という表現になる事で、MSとの間で具体的な行動に落とし込めるということになるのだと思います。( 金額の場合、納入価?、仕切価? となりますし、納入価なら納入先によって変わってきますので。 )

まとめると以下のようになります。

1.卸との共闘品目が対象
2.開業医や薬局の販路が対象
3.品目ではなく包装単位
4.金額でなく本数で設定
5.施設ごと(処方元ではなく個別の施設)

ただし、繰り返しになりますが、やはり会社によって違うのだと思います。システムの機能的な面でも、運用的な面でも・・・。

MR計画や卸計画と異なり、卸施設積上げそのものは、直接的にインセンティブにつながることはないのではないかと思います。MRが自分の計画を達成するためのMSとのコミュニケーションツールといえるかも知れません。

( 2019.12.01 )