製薬会社のコマーシャル部門が使用する各種のマスターについて解説します。
ひとつのサブシステムでもありますが、どの業務システムを担当されるにしても理解しておく必要のある知識です。

マスタを理解しているかどうかで、他の業務理解のスピードも変わってくると思います。



考えたら概要を書いていませんでした。ここ
ここでは製薬会社の主要なマスタについて紹
医薬品は、大体の場合、複数の規格や包装が
製薬会社は、卸から実消化データを入手しま
製薬会社は外部の調査会社からデータを購入
MRにはいくつかのタイプがあることを述べ
大学担当MRと開業医担当MRで、施設や医
文字コードは本当に難しいですね。 施設に

1.マスタ・エンティティの概要

考えたら概要を書いていませんでした。ここでは、概要のみ記述します。それぞれのパートについて別のスレッドで詳述します。実際の物理的なマスタを示しているものではありませんし、エンティティとして切り出されるすべてを網羅しているわけでもありません。

■施設・医師関連:

製薬会社の顧客の柱である、医療機関と医療従事者のマスタです。

■医師(医療従事者):
 医師、歯科医師、薬剤師、一部のコメディカルを格納
 氏名、性別、出身大学、専門領域などの情報
  ( ※歯科医師は、自社が関連薬剤を扱っている場合 )

■施設(医療機関):
 病院、診療所、歯科、薬局、老健、特養などを格納
 名称、住所、診療科目、経営体、病床数などの情報
 ( ※歯科は、自社が関連薬剤を扱っている場合 )

■施設×医師:
 医師と勤務する施設の関連付けを格納
 医師は複数の施設で勤務することが一般的なため。
  (月水金は〇〇病院、火木は△△病院という勤務が多いため、
  A医師-〇〇病院、A医師-△△病院 というデータを持つ)

■MR・組織関連:

■ 組織:
 支店、営業所などの営業組織を格納
 人事上の組織マスタと異なり、実績集計の観点でコード設計される。
 実在しない組織を設定するケースもある。
 名称、上位組織などの情報を持つ

■MR:
 MR、営業所長を格納
 全社員が格納されているケースもある
  支店長や、ダミーデータを持つこともある
 氏名、所属、上長などの情報

■施設・MR:
 施設と担当MRの関連付け情報
 1施設1MRという製薬会社の場合は、施設に内包されているケースも。
 領域別にMRのいる外資などでは、1施設nMRとなるため切り出される。

プロダクト関連:

■品目:
  ブランドのレベル
■規格:
 ブランドを剤型(錠剤、カプセル)、含有量、成分量に、
 ブレイクダウンしたもの
■包装:
  流通の最小単位。SKU単位。
価格:
  仕切価は包装別に設定される。
  価格は変わるため、さらに年月などをキーに加えたもの。
※品目のことを製品と呼んだり、包装のことを製品と呼んだりもする。

■卸関連:

卸に関するマスタ群。製薬会社によって持ち方は様々。

■卸:
 法人レベルと営業部レベルが混在。
 卸合併の長い歴史の中で、吸収された卸が営業部として残っていく。
  ( ex.秋山愛生舘→スズケン愛生舘営業部 )
  法人レベルを別マスタに切り出すケースもある。

■卸デポ:
 営業部などより下位の組織レベルを格納。
 支店、営業所などの複数の組織階層がある。
 支店>営業所、病院部>病院課、〇〇支店>医薬部>医薬1課 など。

 製薬会社は、卸の納入実績を卸内の組織別に管理するため、卸によって異なる複数の組織階層を、自社管理用に登録する。
 細かい組織は登録されないケースもある。
 (ex.卸は課の下にチームがあるが、チームごとに実消化を把握する必要がないので登録しないケースなど)

MS(Marketing Sprcialist):
 重要な登場人物ではあるが、必ずしもきちんとマスタ管理されているわけではない。
 すべての卸から情報を入手できるわけではなく、個人情報でもあり、整備は限定的かも。

■実消化関連:
 卸から受信した各卸毎のコードを、自社コードに変換するマスタ群。
 卸そのもの、卸内組織、卸納入先などを自社コードに変換する。

( 2020.02.28 )

2.施設・医師、MR関連

ここでは製薬会社の主要なマスタについて紹介します。

厳密にはER図とは違いますが、雰囲気はご理解いただけるかと思います。

卸とプロダクト関連を除く主要なエンティティについて、関連記述型エンティティも含めて記述しました。

マスタ構成の実装としては、この通りのところもあれば、異なっているところもあると思います。

また、この図はかなり簡略化しています。実際には、各エンティティにはさまざまなエンティティのサブセットがあります。

施設

 一般に、医療機関のことを「施設」と呼びます。病院、診療所、薬局などの医療機関がおもなデータですが、製薬会社によっては、歯科医院や、老健(介護老人保健施設)、特養(特別養護老人ホーム)なども登録されているでしょう。診断薬を販売しているところなら検査センターも登録されているはずです。また、研究所や購入会社(トンネル会社)であっても、自社品の納入があれば登録されます。

基本的な項目:名称、住所、電話番号、診療科目、経営体、病床数.....ect

他に、自社が設定する販路分類などがあります。

また、サブセットとして、高度医療の実施体制有無、薬局の場合は後発品体制加算などがあります。

後述しますが、自社で整備しているところと、外部データ(日本アルトマーク社等)を利用しているところがあります。自社整備の会社も、精度向上や他社とのデータ交換のために外部データを購入します。

医師

医療従事者マスタ、顧客マスタなどと呼ばれることもあると思います。医師と薬剤師が基本で、そのほかに、歯科医師、看護師、検査技師などが登録されることがあります。

基本項目:氏名、性別、生年月日、卒業大学、卒業年、所属医師会...ect

また、サブセットとして、専門医・指導医・認定医などの資格情報、参加学会などがあります。

外部データの利用については、施設と同様です。

MR

医薬情報担当者( medical representative )

製薬会社における「営業」というと語弊があるかも知れません。 wikipediaには以下のように書かれています。

"医薬品の適正使用のため医療従事者を訪問することなどにより、医薬品の品質、有効性、安全性などに関する情報の提供、収集、伝達を主な業務として行う者のことを指す。"

以前は『プロパー』と呼ばれていましたが、現在は『MR』と呼ばれます。価格交渉は行いません。しかし、現在においても製薬会社の営業第一線の顔であることに変わりはありません。

社員マスタのサブタイプとしているところもあれば、MRのみを取り出したMRマスタとしているところもあると思います。MRの他に、上長である営業所長や、支店長、本社スタッフ、MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン) などが登録されます。

ダミーデータ

MR、医療従事者、施設はどれも、実在しないダミーデータが登録されていることが普通です。たとえば、実際には担当者のいない廃院施設に対して、割り当てるためのダミーMR、複数のMRが担当する大学病院に紐付けるためのダミーMR。

医師の場合は、個人が特定されていない、「検査技師」「薬剤師」のような名称のダミーデータがあります。MRが施設を訪問し、それをSFAで報告する際には医師マスタにデータが登録されている必要がある場合に、ダミーデータが登録されることがあります。

施設については、納入先が登録されていない場合に取り付けるダミー施設などがあります。

施設とMR

MRが施設をどう担当するかは、製薬会社によってさまざまです。

1施設1担当で、独りのMRが自社全品目のディテールをする会社もあれば、領域別に部門が分かれていて、たとえば循環器と消化器の事業部があり、それぞれにMRがいるような場合、循環器科と消化器科のある病院は2人のMRがつくことになります。

1施設1担当制だったとしても、 大学病院などは、正副2名の担当者がついたり、場合によっては3名以上の担当がつくケースがあります。その場合に、正担当ではなく、ダミーの担当を付けるケースがあります。ダミーを付けることによって、データ構造上施設とMRの関係を1:1に保ちます。

施設・医師

通常、医師は一つもしくは複数の病院・診療所で勤務します。

例えば、開業医は施設:医師が1:1です( 特定日に他の病院で診療する医師もいるが )。一方、勤務医は、曜日によって異なる病院に勤務する様なことはよくあります。

また、マスターの実装としては、一つの病院内に同一の医師を複数登録するような場合もあります。たとえば、外科の鈴木Dr、中央手術室の鈴木Drといった様に、所属部科ごとに医師を登録するケースです。

親子( 施設と薬局 )

これについては、別に章立てして記述するつもりですが、先に述べた様に、施設の中には『病院・診療所』と『薬局』があります。患者は、病院・診療所で受け取った処方箋を持って薬局を訪れます。製薬会社の多くは、処方元を把握するために、処方元・処方先の関係をマスタで管理しています。

アルトマークマスタ

株式会社日本アルトマーク 

施設マスタ、医師マスタを販売している会社です。

このアルトマークマスタが業界のデファクトスタンタードと言っても過言ではないでしょう。後発の外資系製薬会社の多くは、このマスタを自社マスタとして使用し、不足分だけをアルトマークの非採番コード域に自社独自採番データとしてマージして管理しているのが一般的ではないかと思います。

また、歴史の古い内資系製薬会社も、自社コードによる独自マスタを基本としつつも、アルトマークマスタを購入して、自社マスタの精度向上に努めるとともに、他の製薬会社と共同プロモーションを行う際の共通言語として、自社コードと紐づけて整備していると思います。

2019.7.13作成 2019.7.14、2020.03.17、2020.08.17 修正

3.品目・製品・規格・包装

医薬品は、大体の場合、複数の規格包装があります。

たとえば、熱が出たり、炎症が起こって痛みがある時などに良く処方される、なじみのあるロキソニン。

第一三共のサイトをみると、経口薬だけで、錠剤60mgと細粒10%があります。

さらに、認知症治療薬のエーザイのアリセプトなどは、含有量として3mg、5mg、10mgの3種。剤型として錠、D錠、細粒、内服ゼリー、ドライシロップの5種があります。

エーザイのウェブサイトか、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のサイトを見てみてください。実に、5剤型3含有量の計11種の規格があります。

ここまでは、患者にとっても違いのある11種となり、それぞれにコードが設定されます。(いろんなレイヤーのコードがあります)

しかし、実消化システムに卸から届くデータのコードはこれではありません。

たとえば、アリセプト錠5mgを例に挙げると、

  ・ 錠5mg:56錠(PTP14T×4)
  ・ 錠5mg:140錠(PTP14T×10)
  ・ 錠5mg:100錠(バラ)

の3種があります。ものは同じで、薬価コードも同一ですが、パッケージが異なります。このレイヤーを『包装』といい、実消化データの製品面でのデータの粒度となります。( 統一商品コードやJANコードが設定されます。 )

ちなみに、アリセプトの場合、11種の規格に対して、計30種の包装があります。

他にも、いろんなコードがあります。例えば、「調剤包装単位コード」。
上記の「アリセプト錠5mg」の場合だと、PTPシートの2包装が同一コードで、バラは異なるコードです。

2019.7.27 作成、2020.03.17修正

4.親子マスタ - 処方元を捉える -

製薬会社は、卸から実消化データを入手しますが、そこでわかるのは、あくまでも、卸が納入した納入先です。

しかし、注射や点滴は病院内で打たれますが、内服薬や外用薬は、処方箋を渡されて、病院の傍にある薬局か、自分の家の近くの薬局で薬を買うのが一般的です。

これを『院外処方』といいます。

一方で、製薬会社としては、マーケティング、MR評価、そして情報伝達のために、実際に処方した医療機関を特定する必要があります。

上図のような場合、薬はa、b、cの各薬局に納入されますが、実際の処方はAクリニックで行われています。しかし、卸から入手する販売データ上、注射薬や点滴など院内で投与されるものを除いて、Aクリニックは現れてきません。

製薬会社は安全性情報、適正使用にかかわる情報をa、b、cの各薬局だけでなくAクリニックにも伝達する必要がありますし、Aクリニックに対してプロモーション活動を行ない、製品の処方獲得に貢献したAクリニックの担当MRを評価する必要があります。

親子マスタ

製薬会社では、薬局で売れた薬の実績を処方元のレイヤーで把握するため、処方元と処方先の関係をマスタとして管理しています。

『親子マスタ』などと呼ばれるこのマスタは、自社でメンテナンスするところもあれば、外部の医薬品マーケティング会社からデータを購入したり、あるいはその組み合わせで維持されます。

しかし、薬局の処方元は1件の医療機関だけとは限りません。

病院や診療所の直ぐそばにある薬局は、大半の処方箋が、そばの病院から来ていると考えていいでしょうが、病院や診療所から離れたところにある薬局や、あるいは最近よく見かける医療モール(ビル診)だと、そこに入っている薬局をどこかひとつの医療機関と結びつける訳には行きません。

その場合、その薬局はマスターの登録上は、親施設を持たない薬局として管理されます。

処方箋の多くを特定の医療機関から受け入れている薬局を『門前薬局』、複数の医療機関からの処方箋を受け入れている薬局を『面分業薬局』といいます。

ただし、医療モール内の薬局の場合は、モール内のどこかの施設を親にすることはあるかも知れません。 たとえば、その会社が眼の薬だけを販売している場合、モール内の眼科医院を親にして差し支えない訳です。

また、薬局の親施設を、薬剤ごとに管理している製薬会社もあるかも知れません。循環器の薬が売れた場合と、消化器の薬が売れた場合で、親施設を分けるということです。

考え方としては上図の様になりますが、メンテナンスが維持できるかという問題もありますので、中々実現は難しいかも知れません。ただ、別の章で書きますが、きわめて高価な薬品の場合は、よりシビアに処方元を管理する必要が生じてきます。

親施設の特定方法

それでは、どのようにその薬局の親施設を特定し、そして判断しているのでしょうか?

ひとつの情報源は自社のMRです。そしてもうひとつが冒頭にも書きましたが、外部データの購入です。そして、処方箋の応需率を基に親施設をどこにするか、あるいはどこともひもづけないかを決めます。

上の図の様に、複数の薬局から処方箋を受け入れている場合、特定の医療機関からの処方箋が、その薬局の受け入れる処方箋の例えば70%以上を占めるときに、親施設として登録するという様なルールを決めています。

しかし、ある製薬会社が眼科の薬だけを販売しているとして、ある薬局の処方箋応需率70%の内科医院があったとします。多品目を扱っている製薬会社なら、処方箋応需率に基づいて親施設を設定することが合理的かもしれませんが、眼科の薬だけを販売している製薬会社の場合、 全品目での処方箋応需率に基づいて親施設を設定することは合理的ではないといえます。

いずれにしても、親子の登録は実態を100%正確に表したものではないということです。

しかし、MRの評価という観点では、上図の全ての施設を同一のMRが担当していれば、実際の処方元とは違う施設に実績が紐づけられたとしても、MRの評価という点では、問題はないという事になります。

2019.7.14 修正2021.2.4

5.続・親子マスタ

製薬会社は外部の調査会社からデータを購入したり、自社MRの情報に基づき、薬局に対して処方元施設を把握していることは、先に書きました。

その際、例えば、『処方箋応需率70%以上の施設を親施設とする。』といったような基準を設けています。この親子の設定基準は製薬会社によってそれなりに異なっていると思いますが、大きくは違わないでしょう。

仮に、70%ということになると、30%は他の医療機関から受け入れている訳ですが、その薬局の実績は親施設のレイヤーで見る際には、100%が親として登録した医療機関に紐づけられます。

上の図の例では、C薬局は受け入れ処方箋の70%がA病院からのものなので、C薬局の親はA病院となりますが、D薬局は最も多く受け入れているのはA病院の処方箋ですが、全体の65%であるため、D薬局の親はA病院とはならず、D薬局の実績となります(親がいない扱い)。

少し乱暴な気もしますが、マスタに登録して運用する以上、これは仕方のないことです。MRにしてみれば、担当施設の処方箋が担当外の薬局に流れることもある一方、担当施設以外から出た処方箋が担当薬局に入ることもある訳です。


実際には、埼玉県川口市の患者が、東京都北区の病院で処方箋をもらって、自宅のある川口市の薬局で薬を買うということは普通にあり得るでしょう。川口市と北区の担当MRが異なるということも当然あり得ます。

そして、製薬会社によっては、この親子関係を品目や、領域ごとに管理しているケースもあるかも知れません。

というのも、比較的安価で納入軒数が多く、どこででも処方されている薬( 例えば防御系の胃薬とか抗生物質など )と、高価な薬とでは事情が変わってくるからです。
前者の場合は100%反映させることは不可能との考え方になりますが、後者の場合はそういうわけには行きません。

高価な薬の場合

高価な薬の場合は事情が異なります。

例えば、2019年の薬価改定で最も高い薬価は、バイオジェンの「スピンラザ」( 脊髄性筋萎縮症治療剤 )で、9,493,024円/瓶。途方もない金額ですが、恐らくこれは医師や看護師が投与するものだと思いますので、薬局で売られることはないでしょう。従って親子の問題は生じません。

薬局で売れそうなものとしては、例えば、ノボノルディスクファーマのレフィキシア( 血友病Bの治療薬 )。これは自己注射がありますから、薬局でも売られるのではないかと思います。静注用2000で845,605円/瓶。

こうなってくると、MRにとって担当医師の処方箋が担当外の薬局に受け入れられると、大きな問題となります。

希少疾患の場合、MRは一つ一つの症例を把握していると考えられますので、このような場合は、プライマリー領域を前提に設計された親子マスタに基づく一律の紐づけとは別の管理が行われているケースがあるでしょう。

希少疾患ではない場合も、『薬局で売れる薬価の高い薬』については、マスタの設定内容に対して、何かしらの補正を行っているケースもあるのではないかと思います。

『新製品が出るときは、薬価の高い薬かどうか、内服か注射薬か、注射薬だったとしたら、自己注射があるかどうかを確認しましょう』というのは、こういう理由のためです。

処方元を特定する究極の方法

処方元に確実に正確に紐づけるには、『処方箋を基に実消化実績を案分する』他ありません。現在卸から納入データを受領しているように、国保連合会支払基金から全てのレセプトデータを入手出来れば実現できるでしょうが、おそらく、現実的なことではないでしょう。

また、MRの活動対象は処方元に対してだけではありません。MRは薬局に対しても情報提供を行います。従って、すべての実消化実績を処方元に紐づけられれば、実消化面でのMRの評価が完成するという訳でもないと考えます。

( 2020.01.09 )

MRのタイプの違いとUIの設計

MRにはいくつかのタイプがあることを述べました。( 登場人物2 – MRの種類 – )。
このMRのタイプの違いにより、担当施設数や施設の種類が大きく異なります。

このことは、施設や、医師を選択するUIの設計時に考慮が必要です。

担当施設数と施設当たりの担当医師数

大学担当MRであれば、担当施設は通常1施設。門前薬局を含めても数施設です。
一方、開業医担当は、100以上の施設を担当することが珍しくありません。
MR数の少ない会社やビジネスユニットなどで、エリア担当制の場合は、マスタ上紐づけられた施設数は1,000を超えても不思議ではありません。

仮に、島根県と鳥取県の2県を受け持つMRがいたとすると、両県で病院診療所合わせて1,308件を担当することになります。
( c.f. 医療施設動態調査(平成30年2月末概数))

薬局が加わると、さらに数が増えます。

次に医師数ですが、大学病院は、多いところでは1,000人の医師がいます。それに対して、無床の開業医であれば医師1人という事も普通です。

施設と医師を選択するUI

ここで、施設や医師を選択するユーザーインターフェースを考えてみます。

大学担当者の場合は、施設の選択は簡単ですが、選んだ施設に1000人の医師がいますので、何らかの絞り込み機能が必要です。

所属部科、医師名かな、、、etc

一方、エリア担当の場合、1,000軒の施設から選択しますから、やはり何らかの絞り込み機能が必要になります。

販路、市区町村、施設名かな、診療科目、、、etc
※販路や市区町村では劇的には絞れません

このように、施設や医師を選択させる場合は、そのアプリケーションを利用するユーザーが、大学担当なのか、開業医担当なのか、エリア担当なのか、担当施設数や医師数がどれくらいなのかという事を、意識する必要があります。

(2020.03.24 )

MR別施設数に関する設計上の留意点

大学担当MRと開業医担当MRで、施設や医師の選択画面のUI設計に考慮が必要と以前書きました。

cf. ( MRのタイプの違いとUIの設計 )

大学病院担当MRは、1施設のみ担当し、その施設には、場合によっては1000人を超える医療従事者がいます。一方、開業医担当MRは、数百~1000以上の担当施設を持つ一方、無床クリニックであれば、マスタ上の医療従事者が1名という事も普通にあるという違いです。

今回の記事では、製薬会社のタイプや規模の面も絡めながら、検索結果としての担当施設数について考えてみたいと思います。

MRアクティビティにせよ、実消化にせよ、施設一覧をアウトプットする際には、その量について留意する必要があります。

施設数とは

ここで、施設数という時には以下の数値を意識する必要があります。

1.マスター上、そのMRに紐づけられた施設数
2.実際に、MRが活動対象とする施設数
3.実消化実績の発生する施設数

上記の数値は、
1.マスタ上の紐づけ施設数 > 3.実消化発生施設数 > 2.活動対象施設数
の関係になります

1.マスター上、そのMRに紐づけられた施設数

その会社のシステムにもよりますが、実際に自社品が納入されるかどうか、自社MRが訪問するかどうかに関わらず、全施設に対して担当MRを設定するケースがあります。

例えば、50人のMRで全国をカバーする製薬会社があったとすると、薬局を除いても一人当たりの担当施設は2000件を超えることになります。

c.f. 外部サイト ( 医療施設動態調査(平成30年2月末概数))

2000件の中から1施設を選択するUIにも考慮が必要ですが、2000件を出力する検索結果のボリュームに対しても考慮が必要となって来ます。

ただし、検索条件指定の際の分母とはなっても、検索結果としてマスター登録ベースでアウトプットとするというのは、マスター照会画面など一部に限られます。

2.実際に、MRが活動対象とする施設数

MRが実際に訪問する対象施設となると、施設数は減ります。自社品の納入先、あるいは納入が見込める先が対象となりますし、プライマリー領域であれば、MSとの分担で、全ての納入先施設に対してMRが訪問することはないでしょう。

また、例えば希少疾患薬メーカーの場合、全国を50人のMRで担当したとして、マスター上MR1人に紐づく施設が2000件だったとしても、実際にMRが活動対象としたり、実消化実績が発生する施設は極めて限られます。

患者数そのものが全国で数百人という疾病もありますから、当然その診察が出来る医療機関数というのは限られます。

マスタに紐づく施設が多かったとしても、活動対象となり得る施設をリスト化できれば、ハンドリングする施設数も減らすことができますし、MRアクティビティレポートであれば、MRの活動量の限界によって一定件数に抑えられます。

3.実消化実績の発生する施設数

これは、自社の品目が実際に納入される施設数です。

この件数は、MRの訪問対象施設よりは多い数になります。

以下は、どの製薬会社にも恐らくあるのではないかと思われる施設別実消化レポートです。

*** 施設別実消化実績トレンド ***
2020/11月度 品目:AAA 東京支店 新宿営業所 MR太郎
#施設 施設名  1月 2月 3月 4月 ・・・・・ 11月 12月
1001 〇〇病院 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
1003 ▲▲内科 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
1012 □□外科 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
1114 ◇◇医院 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999

このレポートの出力行数は、MRのタイプ、製薬会社のタイプや規模によって大きく変わってきます。

大学病院担当者であれば、品目を絞れば一行です。

また、専門的な薬になれば、納入施設数は限られます。希少疾患の薬もそうですし、抗がん剤も納入施設は限られるでしょう。仮にマスタ上2000施設が紐づいたとしても、担当施設の実消化実績一覧を表示すると、件数は数件~数十件という事になります。

一方で、生活習慣病薬、抗生物質、などプライマリー領域の品目であれば、納入施設数は桁違いに増えることになります。

MR、メーカーのタイプによる施設数の違い

以前の記事で、MRのタイプを以下の様に分類しました。

1.プライマリーMR
 1-1.大学病院担当
 1-2.病院担当
 1-3.開業医担当
2.オンコロジーMR
3.スペシャリティMR

c.f. ( 登場人物2 - MRの種類 - )

上記の中で、1MRあたりの実消化実績の発生施設数として最も多いのは、
「1-3 プライマリーMR 開業医担当」です。

そして、その件数は会社の規模、つまりMR数で大きく変わってきます。

大手メーカー等で、プライマリー領域に1000人のMRを配置し、500人が開業医を担当するとすると、1MRあたりの担当施設数は200施設余りとなります。薬局を含めても500には届きません。

しかし、会社の規模が小さくなってくると、当然MR数も少なくなり、1MRあたりの担当施設数も増えて来ますから注意が必要です。

例えば、ジェネリックメーカーなどは注意が必要でしょう。

更に、プライマリー領域にも言えることですが、ジェネリックであれば、処方元施設だけでなく、薬局も含めた納入先施設のレポートが重要になってきます。

加えて、帳合い( どの卸から納入されたか )別になったレポートも必要になって来ますから、実消化の納入施設一覧としての件数はかなり大きくなります。

施設属性をはじめ、様々な絞り込み機能を検討する必要がありますし、あるいはcsvファイル出力などを検討する必要が生じます。

BIツールとスクラッチ

スクラッチ開発であればいかようにでもできますが、BIツールを使用する場合は、おのずとそのツールの制約を受けることになります。

大量のデータの転送が発生してしまう場合もありますので注意が必要です。

まとめ

  • MRの担当施設数はMRのタイプや会社のタイプ・規模によって大きく異なる。
  • 施設数が多いと設計上考慮が必要となる。
  • マスタ上の担当施設が多くても、訪問対象、実消化実績発生件数が多いか少ないかで変わってくる。
  • マスタ上の担当施設が多かったとしても、オンコロジーや希少疾患であれば訪問対象、実消化実績発生件数は少ない。
  • プライマリーやジェネリックは、実消化実績発生件数も多くなる。
  • スクラッチなら何とかなるがBIツールだと難しい場合もある。

( 2020.11.30 )

異体字と外字と文字コード

文字コードは本当に難しいですね。

施設にしても、医療従事者にしても、施設名や医療従事者の氏名には、旧字、異体字、そして外字があります。

広田と廣田、国本と國本、斎藤、齋藤、斉藤、齊藤、高橋、髙橋‥等

これらについて、システム上の考慮が必要です。
問題は2つあります。

1.異体字の名寄せ問題
2.外字問題

です。

1. 異体字の名寄せ問題

これは、医師検索や病院検索などの機能にかかわります。

例えば、斎藤、齋藤、斉藤、齊藤を使い分けて検索しないといけないとなると、あまりにも不親切ですから、 どの字で検索しても、検索結果としてはすべてを網羅して表示する必要があります。

ここで、どこまで寄せる必要があるかという問題が生じます。
國本で検索したら国本も表示すべきでしょうか?

旧字と新字

wikipediaによると、新字体は「 第二次世界大戦後に内閣が告示した漢字表に示された漢字の字体のうち、字体整理により従来の活字の習慣と異なる形となった簡易字体を指す。 」って出ています。難しいですね。

「國」⇒「国」 、「萬」⇒「万」、「瀧」⇒「滝」、「佛」⇒「仏」などが「旧字」⇒「新字」の例です。

国本と検索されても、國本と検索されても、国本と國本の両方のデータを表示することになります。

異体字と正字

新字旧字というのは異体字の一種と考えればいいと思います。異体字-正字は、新字-旧字を含むより広い概念の様です。

例えば、「船」と「舩」や、「峰」「峯」です。
これらは新字旧字の関係にはありませんが、「舩」と「船」は「異体字」です。

この2文字を検索時に同じにしてしまってよいのかという違和感も若干ありますが、最近の検索エンジンは間違ってタイプしたものまで気を効かせてくれますから、広い方がいいのかも知れません。

異体字でもないが似ている字など

真っ先に出て来るのは、「斉藤さん」です。

「齊」⇒「斉」、「齋」⇒「斎」・・・これはそれぞれ、旧字⇒新字の関係にあります。
一方で、「斉」と「斎」、「齊」と「齋」は新字旧字の関係ではありませんし、異体字正字の関係でもありません。「斉」と「斎」は別の字なのです。

しかし、検索する利用者は、「斎藤」「齋藤」「斉藤」「齊藤」のいずれを入力しても、「斎藤」「齋藤」「斉藤」「齊藤」 のすべてが表示されるものと期待しているでしょう。

後述しますが、「厚生労働省の医師等資格確認検索」でも、
「斎」「齋」「斉」「齊」 は異体字とされています。

しかし、斉藤さんシリーズはこの4文字だけではありません。人名用漢字外の「齎」などもっとたくさんあります。どこまでカバーすればよいのか・・・。

実装は変換表

新字旧字だろうが、正字異体字だろうが、異体字ではないけど一般にそう認識されている字であろうと、そのこと自体は実装する上で、あまり重要ではありません。

実装方法としては、変換表を持つという事になります。

2. 外字問題

外字を使用しているかどうかはシステムによって異なると思います。
今は大々的に外字を使用する事は少ないのではないでしょうか。プリンターやパソコンの維持管理が大変になりますし、自社内で登録しても、社外とやり取りする際には役に立ちません。

ただ、どうしてもその字の通りでなければならない性質のシステムであれば、そのシステムの中でのみ外字を登録して使用するという事はあるでしょう。

そして、業界標準ともいうべきアルトマークマスターも、医師名や、医療機関名に外字を使用しています。外字の文字コードと対応フォントは提供されますが、この外字に対応するとなると、維持管理の問題が生じます。一方対応しない場合は、その文字は、文字化けしてしまいます。

悩ましいですが、対応としては、以下の3通りが考えられると思います。
1. 外字対応する。
2. 文字化けしたままにする。

3. 既存の文字に変換する。

外字対応する

これは前述のとおり、外字を登録するという事になります。社内の標準プリンターや全社員配布の標準PCに外字を持ち込むことになります。

あるいは、一部の限定されたシステム内でのみ外字対応するというのが現実的ではないでしょうか。

文字化けしたままにする

これは、もっとも安易な方法です。要は何もしないという事です。そのデータは直接の狙い撃ちとしては検索することは出来ません。

検索結果としては、「〓」「・」「?」などと表示されます。

そもそも、レアなケースですから、これでもいいかも知れません。

既存の文字に変換する

文字コードと字体は提供されますから、外字一覧を眺めて、既存の文字コードに変換するという方法です。

国語的な意味として正しいかどうかは別問題になりますが、既存の字とちょっとだけ違う字は寄せてしまうという考え方です。

ただし、『いやいや、こんな字見たことないですよ』という字もありますから、この方法もすべてをカバーすることは出来ません。

Shift-JISとUnicode

最近の新しいシステムはUnicodeが採用されているケースが多いのではないかと思いますが、他システムや過去とのしがらみで、Shift-JISのシステムはまだまだたくさんあると思います。

結局、外字問題は、程度の問題でもあり、Unicodeだったとしても表現できない字はあります。ただし、この『程度の違い』というのはとても大事で、Unicodeを使えば大分改善されるという事になります。

厚労省 医師等資格確認検索

厚生労働省が公開している、「医師等資格確認検索」というサービスがあります。

医師等の氏名を入力することで存在と登録年が分かるサービスですが、ここに、異体字の読み替え表が載っています。

参考リンク
厚生労働省 医師等資格確認検索

( 2020.10.28 )