続・軒数(院数)
軒数をカウントする上での注意点
何軒の施設に納入されたかを測る、「軒数(院数)」という指標があることを先に述べましたが、今回は、そのカウント方法をもう少し細かくみていきたいと思います。
結局は、その会社の文化や、そのレポートの仕様によって異なることではありますが、注意すべき点があります。
過去記事: 軒数(院数)
どの指標を基準にカウントするか
「軒数」は製品の普及を見る指標なので、納入されたら1軒とカウントされます。
[ 基準となる指標 > 0 ] → +1
では、「納入されたら」とはどのような状態でしょうか?
仕切価金額>0 ? 、換算数量>0?
どの指標をベースにするかで、軒数は微妙に違ってきます。
換算数量の意味は、下記の記事を参照してください。
「本数、数量、成分量」
複数の包装間での価格や換算数量の違いが、返品によって差異となって表れる
というのが主な理由です。
最小粒度の包装単位でカウントする場合、金額でも本数でも換算数量でも結果は同じですが、通常は品目単位か、規格単位(例.20mgカプセル)にカウントします。
『ある品目の普及を追う』、『ある品目で新たに売り出した規格の普及を追う』という見方が普通で、包装単位に普及は追いません。
そうなると、仕切価と換算数量のいずれを用いるかで、結果は微妙に異なります。
Aという品目に、100錠入りと500錠入りの2つの包装があったとします。
成分量をベースに換算数量が設定されているなら、換算数量的には、
[100錠入り×5本] = [500錠入り×1本]
が成り立ちますが、仕切価の場合、
[100錠入り×5本] > [500錠入り×1本] になります。
100錠入り:1000円、 500錠入り:4500円といった具合です。
ここで、当月ある施設に、500錠入りが1本返品され、100錠入りが5本納入されると、仕切価ベースでは、納入軒数=1となりますが、数量ベースでは0となります。
当月に[500錠入り]が1本返品され、[100錠入り]が5本納入されると・・・
仕切り価ベース: 5,000円 - 4,500円 = 500円 ・・・カウント対象
換算数量ベース: 5.0 - 5.0 = 0.0 ・・・ カウント対象外
( ※ここでは換算数量は100錠入りを1.0とします。)
また、換算数量の場合も、薬価をベースにして設定されている場合と、成分量をベースに設定されている場合で変わってきます。
成分量をベースにする場合、10mg錠×2錠 = 20mg錠となりますが、薬価ベースの場合は、10mg錠×2錠 > 20mg錠となります。
ここで、10mg錠の薬価が10円、20mg錠の薬価が18円とします。
[10mg錠100錠入り包装]の換算数量を1.0とすると、[20mg錠100錠入り包装]の換算数量は、
成分量ベースでは・・・2.0
薬価ベースでは・・・・1.8
となります。
当月に[10mg錠100錠入り包装]が2本返品され、[20mg錠100入り包装]が1本納入されると、薬価ベースの換算数量では納入件数=1となりますが、成分量ベースだと0となります。
当月に[10mg錠100錠入り包装]が2本返品され、[20mg錠100入り包装]が1本納入されると・・・
薬価ベース : 1.0×2 - 1.8×1 = 0.2 ・・・ カウント対象
成分量ベース: 1.0×2 - 2.0×1 = 0 ・・・ カウント対象外
このように、返品が発生した際に、差が生じます。
同一施設で、同一品目の異なる包装が、差引ゼロになるかどうかという時に現れる現象なので、「微妙な差」として現れます。
納入価でカウントすると、返品とは別の差が生じる
さらに、卸関連のレポートで納入価を使用して軒数をカウントすると、更に差が拡大します。
これは返品云々とは別の原因です。
値引き、値増しなどの伝票の場合、金額ベースではプラスマイナスが計上されますが、数量としてはゼロになります。
仕切価でも換算数量でもゼロになりますが、納入価にのみ数字が乗ります。
[納入価>0]をカウントの基準にしてしまうと、[値増し]の場合にカウント対象になってしまいますので注意してください。
そもそも返品の場合をどうするか
これは「微妙な差」の話ではありませんが、軒数をカウントする際の方法としては、仕様を確認しておく必要があります。
一般的には、
[ 数量などの指標 > 0 の時にカウント1 ]
だと思いますが、
[ 数量などの指標 > 0 の時にカウント1、<0の時にカウント-1 ]
というケースもあります。
返品を前提に、施設に無理を言って納入して貰っているような場合、大量の返品が発生することがあります。
4月:10院に納入、5月:前月の全量が返品&当月納入無し
という状態の時、
4月10軒、5月0軒とするか、4月10軒、5月-10軒
とするかです。
いずれも、当期でみれば0軒となりますが、単月の状況に応じた評価をするという場合に、影響が出ます。
まとめ
何が正しいかは、そのシステムやレポートの仕様で変わってきます。方法によって差が出るという事を理解しておけばよいかと思います。
・仕切価でカウント
・換算数量でカウント( 成分量 / 薬価 )
・納入価でカウント
・返品は0か-1か
このように、何を指標にするかで結果の値は変わってくる訳ですが、レポートを発注するユーザーに「どうしますか?」と聴いても、通常はユーザーもそんなことは分からなくて、「他と同じにしてください」という答えが一般的になります。
( 2021.2.12作成 )