MR別施設数に関する設計上の留意点
大学担当MRと開業医担当MRで、施設や医師の選択画面のUI設計に考慮が必要と以前書きました。
cf. ( MRのタイプの違いとUIの設計 )
大学病院担当MRは、1施設のみ担当し、その施設には、場合によっては1000人を超える医療従事者がいます。一方、開業医担当MRは、数百~1000以上の担当施設を持つ一方、無床クリニックであれば、マスタ上の医療従事者が1名という事も普通にあるという違いです。
今回の記事では、製薬会社のタイプや規模の面も絡めながら、検索結果としての担当施設数について考えてみたいと思います。
MRアクティビティにせよ、実消化にせよ、施設一覧をアウトプットする際には、その量について留意する必要があります。
施設数とは
ここで、施設数という時には以下の数値を意識する必要があります。
1.マスター上、そのMRに紐づけられた施設数
2.実際に、MRが活動対象とする施設数
3.実消化実績の発生する施設数
上記の数値は、
1.マスタ上の紐づけ施設数 > 3.実消化発生施設数 > 2.活動対象施設数
の関係になります
1.マスター上、そのMRに紐づけられた施設数
その会社のシステムにもよりますが、実際に自社品が納入されるかどうか、自社MRが訪問するかどうかに関わらず、全施設に対して担当MRを設定するケースがあります。
例えば、50人のMRで全国をカバーする製薬会社があったとすると、薬局を除いても一人当たりの担当施設は2000件を超えることになります。
c.f. 外部サイト ( 医療施設動態調査(平成30年2月末概数))
2000件の中から1施設を選択するUIにも考慮が必要ですが、2000件を出力する検索結果のボリュームに対しても考慮が必要となって来ます。
ただし、検索条件指定の際の分母とはなっても、検索結果としてマスター登録ベースでアウトプットとするというのは、マスター照会画面など一部に限られます。
2.実際に、MRが活動対象とする施設数
MRが実際に訪問する対象施設となると、施設数は減ります。自社品の納入先、あるいは納入が見込める先が対象となりますし、プライマリー領域であれば、MSとの分担で、全ての納入先施設に対してMRが訪問することはないでしょう。
また、例えば希少疾患薬メーカーの場合、全国を50人のMRで担当したとして、マスター上MR1人に紐づく施設が2000件だったとしても、実際にMRが活動対象としたり、実消化実績が発生する施設は極めて限られます。
患者数そのものが全国で数百人という疾病もありますから、当然その診察が出来る医療機関数というのは限られます。
マスタに紐づく施設が多かったとしても、活動対象となり得る施設をリスト化できれば、ハンドリングする施設数も減らすことができますし、MRアクティビティレポートであれば、MRの活動量の限界によって一定件数に抑えられます。
3.実消化実績の発生する施設数
これは、自社の品目が実際に納入される施設数です。
この件数は、MRの訪問対象施設よりは多い数になります。
以下は、どの製薬会社にも恐らくあるのではないかと思われる施設別実消化レポートです。
*** 施設別実消化実績トレンド ***
2020/11月度 品目:AAA 東京支店 新宿営業所 MR太郎
#施設 施設名 1月 2月 3月 4月 ・・・・・ 11月 12月
1001 〇〇病院 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
1003 ▲▲内科 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
1012 □□外科 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
1114 ◇◇医院 999 999 999 999 ・・・・・ 999 999
このレポートの出力行数は、MRのタイプ、製薬会社のタイプや規模によって大きく変わってきます。
大学病院担当者であれば、品目を絞れば一行です。
また、専門的な薬になれば、納入施設数は限られます。希少疾患の薬もそうですし、抗がん剤も納入施設は限られるでしょう。仮にマスタ上2000施設が紐づいたとしても、担当施設の実消化実績一覧を表示すると、件数は数件~数十件という事になります。
一方で、生活習慣病薬、抗生物質、などプライマリー領域の品目であれば、納入施設数は桁違いに増えることになります。
MR、メーカーのタイプによる施設数の違い
以前の記事で、MRのタイプを以下の様に分類しました。
1.プライマリーMR
1-1.大学病院担当
1-2.病院担当
1-3.開業医担当
2.オンコロジーMR
3.スペシャリティMR
c.f. ( 登場人物2 - MRの種類 - )
上記の中で、1MRあたりの実消化実績の発生施設数として最も多いのは、
「1-3 プライマリーMR 開業医担当」です。
そして、その件数は会社の規模、つまりMR数で大きく変わってきます。
大手メーカー等で、プライマリー領域に1000人のMRを配置し、500人が開業医を担当するとすると、1MRあたりの担当施設数は200施設余りとなります。薬局を含めても500には届きません。
しかし、会社の規模が小さくなってくると、当然MR数も少なくなり、1MRあたりの担当施設数も増えて来ますから注意が必要です。
例えば、ジェネリックメーカーなどは注意が必要でしょう。
更に、プライマリー領域にも言えることですが、ジェネリックであれば、処方元施設だけでなく、薬局も含めた納入先施設のレポートが重要になってきます。
加えて、帳合い( どの卸から納入されたか )別になったレポートも必要になって来ますから、実消化の納入施設一覧としての件数はかなり大きくなります。
施設属性をはじめ、様々な絞り込み機能を検討する必要がありますし、あるいはcsvファイル出力などを検討する必要が生じます。
BIツールとスクラッチ
スクラッチ開発であればいかようにでもできますが、BIツールを使用する場合は、おのずとそのツールの制約を受けることになります。
大量のデータの転送が発生してしまう場合もありますので注意が必要です。
まとめ
- MRの担当施設数はMRのタイプや会社のタイプ・規模によって大きく異なる。
- 施設数が多いと設計上考慮が必要となる。
- マスタ上の担当施設が多くても、訪問対象、実消化実績発生件数が多いか少ないかで変わってくる。
- マスタ上の担当施設が多かったとしても、オンコロジーや希少疾患であれば訪問対象、実消化実績発生件数は少ない。
- プライマリーやジェネリックは、実消化実績発生件数も多くなる。
- スクラッチなら何とかなるがBIツールだと難しい場合もある。
( 2020.11.30 )